塩パン1個作るのに熱力学まで持ち出しました|バターはどこへ消えた?
塩パンの中に、確かにバターを丸ごと入れました。
ところが焼き上がったパンを割ると、
バターがあった場所には長い空洞だけが残っています。
バターはいったい、どこへ消えたのでしょうか?
今回は塩パン1個を作りながら、
熱伝達、
グルテンの粘弾性、
脂肪の移動、
水分の気化、
水蒸気膨張、
そして褐変反応まで追跡してみました。
まず、生地に弾性的なグルテン網を形成し、
冷たいバターを中心部へ封じ込めます。
発酵が進むと、
酵母が作り出す二酸化炭素によって生地内部が膨張します。
そしてオーブンへ入れた瞬間、
状況が大きく変わり始めます。
生地の構造が完全に固まる前に、
バターが先に溶け始めます。
液体になった脂肪は、
重力と生地内部の微細な隙間に沿って下へ移動します。
しかし、バターは脂肪だけではありません。
含まれている水分は加熱されると水蒸気へ変化します。
その水蒸気と発酵によって生まれた気体が内部を押し広げ、
バターがあった場所には長い空洞が形成されます。
そして下へ流れたバターは、
天板とパンの間にたまり、
今度はパンの底を直接揚げるように加熱します。
水分が減るにつれて表面温度が上昇し、
褐変反応が進むことで、
塩パン特有の香ばしくパリッとしたバタークラストが完成します。
つまり、バターは消えたわけではありません。
溶けて、
移動して、
水分は水蒸気となり、
残った脂肪はパンの底を香ばしく焼き上げていました。
塩パン1個に、
ここまで熱力学を持ち出す必要があったのでしょうか?
たぶん必要ありません。
でも、やりました。
ムダなくらい本気。
でも、知ってみると意外と役に立つ。
ムダに本気な料理科学
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